超自我

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 品川区某所にあるゴミ屋敷に掲げられている張り紙。おそらくこの屋敷の住民が掲示したものなのだろうと思う。この紙を見ていて、ふとフロイトのいう「超自我」について思いを巡らせた。

おそらくこの屋敷の主人は自分の家がゴミ屋敷などとは思っておらず、こうしてゴミを他人の家に不法投棄するという非常識な行動に被害者として「いいかげんにしろ」と憤怒している。だが、しかし、この主人は自分の家そのものが近隣住民にとっては不法投棄そのものであり、加害者となってしまっているということに気づいていない。私はこれが「超自我」の為せる業と思ったのである。

フロイトは「人間は自由に思考しているつもりで、実は自分がどういうふうに思考しているのかをしらないで思考している」と言った。人間の脳には意識よりもはるかに広大な無意識の領域があり、自分に都合のいいことだけを意識に送り込む番人がいる。これが「超自我」だ。つまり、自分は自分自身の精神世界の主人公ではない。そういうことだ。

自分が「何ものであるか」なんてことは知らず、自分が為したことの意味や価値を他者からのメッセージとしてうけとることによってのみ人間は自分が何ものであるのかを事後的に知る。

このへんを勘違いしてしまうと「私が的外れなことを言っているということを私だけが知らない」という事態を招く。